【健康寿命】「親の健康を見守る」が自分の健康にもなる理由

「最近、親の足取りが少しゆっくりになってきた気がする」「病院通いが増えてきて心配だけど、どこまで口を出していいのか分からない」――40代以降になると、そんな気づきが少しずつ増えてくる人も多いのではないでしょうか。
親の健康を気にかける時間が増えると、なんとなく気持ちが重くなったり、「自分の生活で手一杯なのに…」と戸惑ったりすることもあります。ただ一方で、親の健康を見守ることは、実は自分自身の健康寿命を守ることにもつながっていくようです。
この記事では、「親の健康を見守る」というテーマを、ただの「お世話」や「介護」の話ではなく、親も自分も元気でいられる時間を少しでも長くするための関わり方として整理してみます。人生の後半戦に差しかかってきた40〜70代の方が、「今からでもできること」をイメージしやすいように、やさしくひも解いていきます。
目次(表示させると見出しが見られますよ!)
- 1 親の健康を気にし始めるタイミングには「戸惑い」がつきもの
- 2 「見守る」と「抱え込む」はまったく違うもの
- 3 親の健康チェックで自然と身につく「観察力」
- 4 親の健康を通して学べる基礎知識(血圧・体重・食事など)
- 5 親の生活から「自分の未来」をそっとのぞいてみる
- 6 ほどよい距離感で「見守り」を続けるコツ
- 7 介護の一歩手前からできる「予防の声かけ」
- 8 兄弟姉妹・パートナーと「チーム戦」にして負担を分け合う
- 9 親を支える経験が「自分の健康寿命の土台」になる
- 10 自分自身のケアも「同じくらい大切」だと認めておく
- 11 地域のサービスや公的な支援も「遠慮せず活用」していく
- 12 「親も自分も、いまを大切に生きる」ための健康寿命という考え方
親の健康を気にし始めるタイミングには「戸惑い」がつきもの
まず整理しておきたいのが、「親の健康を気にし始める時期には、ほとんど必ず戸惑いがセットでついてくる」ということです。親がまだまだ元気なうちは、自分が「見守る側」になるなんて想像もしません。
ところが、ふとした瞬間に変化に気づきます。
- 階段を上がるスピードがゆっくりになっている
- 同じ話をくり返すことが増えてきた
- 薬の数が多くなってきて心配になる
- 運転免許をどうするか、そろそろ考えたほうがいい気がしている
こうした小さなサインに気づくと、「もうそんな年齢なんだな」「でも、あまり口うるさく言うのも違うよな…」と、揺れる気持ちが出てきます。この戸惑いは、多くの人が経験するごく自然な反応だと考えられています。
ここで大切なのは、「全部を抱え込んで完璧にやろう」と頑張りすぎないことです。親の健康を見守ることは、長距離マラソンのようなもの。スタートから全力疾走してしまうと、途中で息切れしてしまいます。むしろ「できることを、できる範囲で、ゆるく続ける」くらいがちょうど良いようです。
「見守る」と「抱え込む」はまったく違うもの
親の健康を思うあまり、なんでもかんでも自分が背負い込んでしまう人もいます。「病院の付き添いも、買い物も、家事も、全部自分がやらないと」と頑張りすぎると、気づかないうちに心身が疲れてしまうことがあります。
ここでキーワードになるのが、「見守る」と「抱え込む」を分けて考えることです。
「見守る」とは、親のペースを尊重しながら、変化に気づき続けること
見守るとは、親の生活に過度に介入することではありません。親が自分でできていることはそのまま任せつつ、「いつもと違う変化」や「困っていそうな様子」に気づいてあげることが中心になります。
たとえば、次のような関わり方は「見守る」に近いイメージです。
- 電話やLINEで、週に1〜2回はゆるく様子を聞く
- 受診の内容や薬の数を、ざっくり一緒に確認してみる
- 転倒や事故につながりそうな危険な場所がないか、さりげなくチェックする
- 「最近どう?」と世間話をしながら、食欲や表情の変化を観察する
こうした「観察」と「ゆるい会話」を積み重ねていくことが、親の健康を守る土台になっていきます。
「抱え込む」とは、全部を自分の責任だと思い込んでしまうこと
一方で、「抱え込む」とは、親の健康状態をすべて自分の責任だと感じてしまう状態です。思いやりが強い人ほど、「自分がもっとちゃんとしていれば」「もっと頻繁に通っていれば」と自分を責めてしまうこともあります。
しかし、親の体や心の変化には、年齢や持病、生活環境など様々な要因が関わっています。子ども世代がすべてをコントロールすることは現実的ではありません。むしろ、できることと、できないことの境界線をはっきりさせることが、長い目で見たときに大切だと考えられています。
「見守る」と「抱え込む」の違いを意識するだけでも、心の負担は少しずつ軽くなっていくはずです。
親の健康チェックで自然と身につく「観察力」
親の健康を見守るようになると、いやでも細かな変化に目が向くようになります。この「観察力」は、そのまま自分自身の健康管理にも役立っていきます。
たとえば、親の様子を見ていると、次のようなサインに気づきやすくなります。
- 少し息切れしやすくなっている
- トイレの回数が増えたり減ったりしている
- 食べる量や好みが変わってきている
- 以前よりも外出を面倒くさがるようになった
こうしたサインは、将来の自分にも起こりうる変化です。親の変化を通して、「今のうちに自分はどうしておこうかな」と考えるきっかけが自然と増えていきます。
観察力が身につくと、自分自身の小さな変化にも敏感になります。「最近ちょっと歩くスピードが落ちてきたかも」「体重がじわじわ増えている気がする」といった自分のサインにも、早めに気づきやすくなるようです。
親の健康を通して学べる基礎知識(血圧・体重・食事など)
親の通院や検診に付き添ったり、結果の紙を一緒に見るようになると、自然と健康に関する基礎知識が増えていきます。「血圧」「血糖値」「コレステロール」「骨密度」など、数字だけ見てもピンとこなかった言葉が、少しずつ身近なものになっていきます。
こうした情報は、専門家からの説明を聞きながら、ゆっくり理解できれば十分です。数値の基準や生活習慣との関係については、厚生労働省やお住まいの自治体の健康づくりページなども参考にしてください。
親の検査結果を一緒に見ていると、「塩分を控えたほうがいいって先生に言われた」「体重をあと何キロか落としたいと言われている」など、具体的な課題が見えてきます。ここで大切なのは、「親にだけ厳しいことを言う」のではなく、「自分も一緒に見直してみよう」と考えることです。
たとえば、こんな関わり方が考えられます。
- 「お互いに夜のラーメンは週1回までにしてみようか」と提案してみる
- 「一緒に血圧を測る習慣をつくってみよう」と、親子で毎朝測定してみる
- 「散歩のついでに買い物する日」を決めて、歩く時間を少し増やしてみる
こうした小さな取り組みは、親の健康だけでなく、自分の生活習慣の見直しにもつながっていきます。親のために始めた行動が、気づけば自分の体を守ることにもなっている――そんな「一石二鳥」の関わり方が理想的だと感じています。
親の生活から「自分の未来」をそっとのぞいてみる
親の健康を見守ることは、言い換えれば「自分の数十年後を先に見せてもらっている」ようなものでもあります。骨格や体質、生活の癖などは、親子で似ている部分も多いといわれています。
もし親が生活習慣病で苦労しているなら、「自分も同じ道をたどる可能性」を一度イメージしてみるのも一つの方法です。もちろん、遺伝だけで決まるわけではありませんが、「親の今」は「自分の未来の候補の一つ」として参考になる部分があります。
たとえば、こんな視点で見てみると、気づきが増えやすくなります。
- 親はどんな食生活をしてきたのか
- 運動習慣はどれくらいあったのか
- 仕事や人間関係のストレスをどのように受け止めていたのか
- どんなときに体調を崩しやすかったのか
これらを振り返ると、「自分も同じパターンをくり返しそうだな」と感じる部分が見つかるかもしれません。そこで、「完全コピー」ではなく「自分なりの調整」をしていくことが、健康寿命を伸ばすヒントになっていきます。
ほどよい距離感で「見守り」を続けるコツ
では、実際に親の健康を見守るとき、どのような距離感を意識すると続けやすいのでしょうか。ここでは、負担になりすぎないための小さな工夫をいくつか紹介します。
会う・話す回数は「自分も無理なく続けられるペース」にする
親のことが心配だからといって、毎日のように電話をしたり、頻繁に通ったりすると、子ども世代の生活が回らなくなってしまうことがあります。特に仕事や子育て、自分の通院なども抱えていると、心身ともに疲れてしまうかもしれません。
おすすめなのは、最初に「現実的に続けられそうなペース」を自分で決めてしまうことです。
- 電話は週に1回〜2回を基本にする
- 対面で会うのは、月に1回〜2回を目安にする
- 遠方の場合は、オンライン通話やビデオ通話を活用する
こうした「ゆるい目安」を決めておくと、自分の生活も守りながら、長く見守りを続けやすくなります。回数が多ければ良いというわけではなく、お互いにとって負担にならないリズムを探していくことが大切です。
スマホやノートを使って「一緒に記録」を楽しむ
最近は、血圧や歩数、体重を記録できるアプリや機器も増えてきました。こうしたツールを活用して、親と一緒に「健康記録」をつけていくのも一つの方法です。
デジタル機器が苦手な親御さんの場合は、シンプルなノートでも十分です。
- カレンダーに、毎日の体重や血圧を簡単にメモしていく
- 「今日は散歩○分」「友だちとお茶」「好きな番組を見て笑った」など、気分が良かった出来事も書き込む
- 病院で言われたことを、忘れないうちに一緒にメモしておく
こうした記録は、あとから見返すと小さな変化に気づきやすくなりますし、通院時に医師へ伝える手助けにもなります。さらに、子ども世代にとっても、「自分も同じように記録をつけてみようかな」と思うきっかけになります。
介護の一歩手前からできる「予防の声かけ」
親がまだ自立して生活しているうちからできる「予防の声かけ」も、健康寿命を守るうえで大切だといわれています。ここでは、押しつけになりにくい伝え方のヒントをまとめてみます。
命令ではなく「一緒にどう?」のスタンスで
「もっと歩いたほうがいいよ」「そんなに甘いものを食べたらダメでしょ」といった言い方は、どうしても親の反発を招きやすくなります。親からすれば、長年の生活スタイルを急に変えるのは簡単ではありません。
そこで意識したいのが、「一緒にやってみない?」というスタンスです。
- 「ぼく(わたし)も最近運動不足だから、一緒に公園を一周してみない?」
- 「塩分控えめの味付け、試しに今度の夕飯で一緒にチャレンジしてみようか」
- 「お互いに健康診断の結果を見せ合って、来年までにどこを改善するか話してみよう」
こうした声かけは、親を「子ども扱い」するのではなく、同じ大人として並んで歩くイメージに近づけてくれます。
「できていること」を見つけて、そこを褒める
親の生活を見ていると、つい「足りないところ」ばかりに目がいきがちです。しかし、人は誰でも、「できていること」「うまくいっていること」を認められたほうが、前向きに変化しやすいといわれています。
たとえば、次のような声かけを意識してみるのも一つの方法です。
- 「毎朝、新聞取りに行くついでに外を歩いているの、すごくいい習慣だね」
- 「野菜をしっかり食べるようにしているの、見習いたいくらいだよ」
- 「薬を飲み忘れないように工夫しているの、さすがだね」
こうした言葉をかけることで、親自身も「自分はまだまだやれている」という自信を持ちやすくなりますし、子ども世代にとっても、「自分も同じように続けよう」と思えるヒントになります。
兄弟姉妹・パートナーと「チーム戦」にして負担を分け合う
親の健康を見守るうえで、子ども一人がすべてを背負う必要はありません。兄弟姉妹がいる場合はもちろん、パートナーや親しい親族も含めて、「チーム戦」で支えるイメージを持てると、心の負担はかなり軽くなります。
たとえば、こんな分担の仕方があります。
- 長男は通院の付き添い、次男は手続きや書類関係のサポートを中心にする
- 遠方に住んでいる兄弟は、定期的な電話やオンライン通話を担当する
- パートナーには、こちら側の愚痴や不安を聞いてもらう「心のサポーター」役をお願いする
大切なのは、「完璧な分担」を目指すことではなく、お互いにできることを少しずつ出し合うことです。ときにはうまくいかないこともありますが、「一人で全部抱え込まない」という意識だけでも、長期的な健康寿命を守るうえで大きな意味を持ってきます。
親を支える経験が「自分の健康寿命の土台」になる
親の健康を見守る経験は、ときにしんどく感じることもある一方で、自分の健康寿命を考え直す貴重なきっかけにもなります。
たとえば、親の転倒や骨折をきっかけに、「筋力が落ちると、こんなに生活が変わるんだ」と肌で感じることもあります。それを見て、「自分は今のうちから脚の筋肉を保つ習慣を持っておきたい」と考え直す人も多いようです。
ぼく自身も、親世代の体調の変化や、自分の高血圧をきっかけに、本格的に体づくりに取り組むようになりました。その記録をまとめたのが、ライザップ・高血圧オヤジ54歳の挑戦※減量期の全記録!です。親の世代の健康や自分の血圧を意識したことで、「このままではマズい」と本気で感じたことが、健康寿命を見直す大きなきっかけになりました。
親の健康を見守ることは、「自分の未来のためのリハーサル」のような側面もあります。誰かの健康を支える視点を持つことで、自分の生活にも自然と「健康目線」が育っていくのだと思います。
自分自身のケアも「同じくらい大切」だと認めておく
親のことを思うあまり、自分の健康や心のケアを後回しにしてしまう人も少なくありません。しかし、長い目で見れば、子ども世代の健康状態が安定していることそのものが、親にとっても安心材料になります。
たとえば、次のようなセルフケアを「自分のため」と割り切って取り入れていくことも大切だと考えられています。
- 自分自身の定期検診や人間ドックのスケジュールを、きちんと確保する
- ストレスが強くなってきたと感じたら、趣味や友人との時間を意識的に増やす
- 必要であれば、地域の相談窓口やかかりつけ医に、親のことや自分の不安を相談してみる
「親のことで忙しいから、自分の受診は後回し」は、短期的には頑張れても、長期的には自分の健康寿命を削ってしまう可能性があります。むしろ、自分の体調が安定しているからこそ、親のサポートも続けていける――そんな視点を大切にしたいところです。
地域のサービスや公的な支援も「遠慮せず活用」していく
親の健康を家族だけで守ろうとすると、どうしても限界が出てきます。近年は、各自治体で高齢者向けの健康教室や介護予防事業、相談窓口などが整備されてきているようです。
お住まいの地域にも、次のようなサービスが用意されていることが多いので、一度市区町村のホームページなどを確認してみるのもおすすめです。
- 高齢者向けの運動教室やフレイル予防教室
- 認知症予防・家族向けの勉強会
- 地域包括支援センターや介護相談窓口
- 健康診断・がん検診などの案内
こうした情報は、自治体の広報紙やホームページにまとまっていることが多いので、「○○市 高齢者 健康づくり」などで検索してみると見つけやすいです。家族だけで抱え込まず、公的な支援も「チームの一員」として頼っていく発想が大切だと感じています。
「親も自分も、いまを大切に生きる」ための健康寿命という考え方
ここまで、「親の健康を見守る」が自分の健康にもつながっていく理由を、いくつかの切り口から整理してきました。
- 親の小さな変化に気づくことで、自分の観察力も高まる
- 検査や通院に付き添うことで、健康に関する基礎知識が増える
- 親の姿を通して、「自分の未来の候補」をイメージしやすくなる
- 一緒に生活習慣を見直すことで、親子ともに健康寿命の土台が整っていく
- チーム戦・公的支援を活用することで、長く無理なく関わり続けられる
健康寿命という言葉は、「できるだけ長く元気で動ける時間を大切にしよう」という考え方を指しているようです。これは、親だけでなく、自分自身にも当てはまります。
親の健康を見守る時間が増えていくのは、ある意味で「人生のバトンが少しずつ渡されていくプロセス」なのかもしれません。親の体や心の変化を、悲しみだけで受け止めるのではなく、「自分たち家族の健康戦略を見直すチャンス」として捉え直してみることが、これからの時代にはとても大切になっていくように感じています。
親も自分も、それぞれのペースで歳を重ねていきます。完璧なサポートを目指す必要はありません。ときどき不器用になりながらも、「今日はちゃんと顔を見られた」「少しだけ本音を話せた」「一緒に笑えた」。そんな小さな積み重ねが、きっと親の健康寿命も、自分の健康寿命も、じんわりと支えてくれるのではないでしょうか。
医療的な判断や治療については、必ず主治医や専門職の意見を大切にしながら、国や自治体、信頼できるメーカーなどの情報も参考にしてください。そのうえで、あなた自身の心と体を大事にしながら、親の健康を「そっと見守る」スタイルを、一緒に育てていければと思います。

