【健康寿命】人生後半の幸せは“体力”より“感情力”にあった

40代・50代・60代…と年齢を重ねてくると、どうしても「昔と比べて体力が落ちたなあ」と感じる場面が増えてきますよね。階段を上るとすぐ息が切れたり、徹夜明けでも平気だった若い頃が、まるで別の人生のように思えることもあるかもしれません。
一方で、こんなふうに感じることはないでしょうか。
- 若い頃よりイライラしやすくなった気がする
- 将来への不安がふっと頭をよぎる
- 親の介護や仕事の責任、人間関係など「心の疲れ」のほうが重く感じる
人生の後半でカギになるのは、「体力」だけではないようです。むしろ、限られた体力をどう活かすかを決めている「感情の扱い方」――ここではそれを感情力と呼んでみたいと思います。
この記事では、サイト運営者であり、ライザップでの減量やリバウンド経験もしてきた私・和久井が、健康寿命(=元気に動ける期間)という視点から、「感情力」の育て方をいっしょに考えていきます。
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健康寿命は「体が元気な期間」だけではない
健康寿命は「元気に動ける時間」のこと
まず、この記事でのキーワードである「健康寿命」について、かんたんに整理しておきます。
健康寿命とは、「日常生活を大きな支障なく送れる期間」のことです。単に「何歳まで生きられるか」という平均寿命とは少し違い、「自分の足で歩き、ある程度やりたいことを楽しめる時間」をイメージすると分かりやすいかもしれません。
国の健康づくり施策でも、単に寿命を伸ばすだけでなく、「こころの健康」や生きがいを含めた健康寿命を大切にしようという流れが強くなっているようです。心と体は切り離せない、という考え方ですね。
体力だけでは守りきれない健康寿命
健康寿命というと、「運動して筋肉をつける」「食事に気をつける」といったイメージが強いかもしれません。もちろん、それらはとても大切です。ただ、人生後半の健康寿命を支えているのは、どうやら体のコンディションだけではないようです。
たとえば、こんな二人を想像してみてください。
- Aさん:体力はそこそこあるが、いつもイライラや不安に振り回されて疲れている
- Bさん:体力は少し落ちてきたが、自分のペースで穏やかに毎日を楽しんでいる
どちらが「健康寿命が長そうか」と言われたら、多くの人はBさんを思い浮かべるのではないでしょうか。転倒しない筋力や、病気を防ぐ生活習慣ももちろん大切ですが、
「今日もそこそこ元気で、なんだかんだ楽しい」
と感じられているかどうかが、その人の行動量や人付き合いの積極性に大きく影響していきます。
その土台になっているのが、今回のテーマである感情力です。
人生後半で育てたい「感情力」とは?
感情力=感情を「上手に付き合う力」
感情力というのは、専門用語ではありませんが、ここでは次のように考えてみます。
感情力とは、「自分の感情に気づき、受け止め、少しずつ扱い方を選び直していく力」
感情力がある人は、次のような特徴を持っているように見えます。
- イライラや不安が湧いても、「あ、今イライラしているな」と一歩引いて眺められる
- 自分の気持ちを言葉で伝えられるので、人間関係のトラブルがこじれにくい
- 落ち込むことはあっても、「いつかまた戻れる」とどこかで信じていられる
- 悩みや不安を、一人だけで抱え込まずに誰かと分かち合える
逆に、感情力が弱っていると、
- 怒りが爆発してしまい、人間関係がギクシャクする
- 不安や心配ごとで頭がいっぱいになり、体を動かす気力がわかない
- 「自分はダメだ」と思い込んでしまい、新しいことに挑戦できない
といった状態になりやすくなります。
感情を「我慢すること」ではない
ここで大事なのは、感情力とは「感情を押し殺す力」ではないという点です。
特に、今の40〜70代の方々は、子どもの頃から「泣くな」「弱音を吐くな」「がんばればなんとかなる」といったメッセージをたくさん受け取ってきた世代だと思います。私自身もそうでした。
その結果、知らないうちに
- つらくても「こんなのたいしたことない」と自分に言い聞かせる
- 本当は寂しいのに、つい強がってしまう
といったクセがついていることも多いようです。
感情力は、感情を消し去ることではなく、
- 「そう感じている自分がいる」と認める
- できる範囲で、体や生活を整えていく
- 必要なときは、周りの人や専門家に頼る
といった、柔らかい向き合い方を身につけていくイメージに近いです。
人生後半だからこそ育ちやすい力
うれしいことに、感情力は年齢とともに自然と育っていく面もあります。若い頃に比べて、いろいろな出来事を乗り越えてきた分、
- 「あのときもなんとかなったから、今回もきっと大丈夫だろう」
- 「完璧じゃなくても、まあいいか」と力を抜けるようになった
そんな感覚を持てる方も多いはずです。
人生の後半は、体力はゆっくりと下り坂でも、感情力はまだまだ伸ばしていける時期です。ここから先の健康寿命を支える大きな味方になってくれるはずです。
感情力が健康寿命を支えると言われる理由
1. ストレスとの付き合い方が体にも影響する
怒りや不安などの強い感情が長く続くと、眠りが浅くなったり、食欲が乱れたり、血圧が上がりやすくなるなど、体にも少しずつ影響が出ると考えられています。
もちろん、ストレスがすぐに病気を引き起こすわけではありません。ただ、国や自治体の情報でも、「ストレスと上手につき合うこと」や「こころの健康」が健康づくりの大事な柱として取り上げられています。感情力を育てていくことは、遠回りのようでいて、実はとても現実的な健康対策のひとつと言えそうです。
2. 「自分で選べる」という感覚が、毎日の活力になる
高齢者の研究では、「自分の生活や健康を自分である程度コントロールできている」という感覚(自己効力感)がある人ほど、生きがいを感じやすく、生活の質も高い傾向があると報告されています。難しい言葉ですが、要するに「まだ自分の人生にハンドルを握っている感じ」があるかどうか、ということですね。
感情力が育ってくると、
- 「イライラしたから、少し散歩して気分転換しよう」
- 「今日は疲れているから、無理せず早く休もう」
といった、小さなセルフケアを自分で選べるようになってきます。「自分で自分を守れる感覚」が、健康寿命の土台になると考えるとイメージしやすいかもしれません。
3. 人間関係が穏やかだと、外に出る気持ちも続きやすい
人生後半の健康寿命を考えるうえで、もうひとつ大切なのが「人とのつながり」です。家族や友人、地域の仲間とほどよく関わっている人は、孤立しにくく、外出や趣味を続けやすいと言われています。
感情力がある人は、相手の言動にただ反応するのではなく、
- 「あの人も疲れていたのかもしれないな」と一度受け止めてから話す
- 「さっきは言い過ぎたかも」と素直に謝ることができる
といった柔らかいコミュニケーションがしやすくなります。その結果、人間関係のトラブルが少なくなり、「またあの人たちと会いたいな」と外に出るきっかけも増えていきます。
4. 感情が整っていると、運動や食事の習慣も続きやすい
ボディメイクや健康習慣を続けるうえでも、実は感情力は欠かせません。
たとえば、イライラしたり落ち込んだりしているときは、
- 「もう今日はやる気が出ないから、運動はお休みだ」
- 「ストレス発散だ」とつい食べ過ぎてしまう
といった行動が増えやすくなります。
逆に、感情力が育ってくると、
- 「今日は気分が重いから、激しい運動はやめて、軽いストレッチだけにしておこう」
- 「イライラしているけれど、まずは温かいお茶でも飲んで落ち着こう」
といった「ほどよい選択」ができるようになります。これは派手ではありませんが、健康寿命をじわじわと支えていく、とても大事な力ではないかと感じています。
怒り・不安・孤独…よくある感情との付き合い方
ここからは、人生後半によく出会う感情たちと、少しだけラクに付き合うためのヒントを整理してみます。
1. 怒り:まずは「立ち止まる練習」から
家族の一言、仕事や地域の役割、ニュース…。「なんでこんなことを言うんだ」「どうして分かってくれないんだ」と、怒りがこみ上げる場面は誰にでもあります。
怒りを完全になくすことはできませんが、次のような小さな工夫で「爆発しにくくする」ことはできそうです。
- その場で反論する前に、ゆっくり3回深呼吸する
- 「今、自分は何に腹を立てているのか」を心の中でつぶやいてみる
例:「自分だけ家事をしている気がして、寂しくなっている」など - 落ち着いてから、自分の気持ちを「私はこう感じた」と主語を自分にして伝える
うまくできない日があっても大丈夫です。「つい感情的に言ってしまったな」と気づけたら、それだけでも感情力の筋トレになっています。
2. 不安:書き出して「今できること」と「いったん置くこと」を分ける
将来のお金のこと、健康のこと、親やパートナーの介護のこと…。人生後半は、どうしても不安材料が増えていきます。
不安と上手につき合うためのひとつの方法として、
- 頭の中の不安を、紙に全部書き出してみる
- 「今の自分にできること」と「今はどうにもならないこと」に分けてみる
- 「今できること」から、ほんの小さな一歩だけ決めてみる
というステップがあります。
たとえば、「将来の医療費が不安」という気持ちが出てきたら、
- 「市の健康診断の案内を読み直してみる」
- 「かかりつけ医に、今の生活習慣について相談してみる」
といった、「今日・明日できること」に変えてみるイメージです。不安をゼロにするのではなく、「不安とつき合いながら動ける自分」を育てていくことが大切だと感じています。
3. 孤独感・虚しさ:「誰かの役に立つ小さな行動」を探す
定年や子どもの独立などで役割が変わると、「自分はもう必要とされていないのでは」と感じてしまうこともあるかもしれません。こうした孤独感や虚しさも、人生後半ではとても自然な感情のひとつです。
そんなときは、いきなりボランティアや大きな活動に飛び込む必要はありません。たとえば、
- スーパーで店員さんに「ありがとう」と一言伝えてみる
- 家族や友人に「最近どう?」とメッセージを送ってみる
- 近所の人に、季節の挨拶をしてみる
といった、小さな行動から始めてみるのも良さそうです。人とのつながりは、「自分はまだ誰かの役に立てる」という感覚を思い出させてくれます。それがまた、感情力と健康寿命を支えるエネルギーになっていきます。
今日からできる「感情力トレーニング」5つの習慣
ここからは、人生後半からでも無理なく始められる「感情力トレーニング」を、具体的な習慣として5つ紹介します。すべてを一度にやる必要はなく、「やりやすそう」と感じるものからゆっくり試してみてください。
1. 朝と夜の「今の気持ちチェック」
朝起きたときと寝る前に、
- 「今の気分は、晴れ?くもり?雨?」
と、自分に問いかけてみます。言葉にするのが難しければ、天気のイメージだけでもかまいません。
大切なのは、「いい」「悪い」とジャッジすることではなく、
- 「今日はなんとなくどんよりしているな」
- 「今日は意外と晴れ模様だな」
と、今の自分の状態に気づくことです。これを続けていくと、「気分が曇りの日は、こういうことが起きやすい」といった自分なりのパターンが見えてきます。
2. ノートにそのまま書く「感情メモ」
毎日は難しくても、週に数回でもいいので、ノートやメモ帳に
- 「今日うれしかったこと」
- 「モヤモヤしたこと」
- 「本当はこうしたかった、という本音」
を書き出してみるのもおすすめです。
ポイントは、
- きれいな文章にしようとしない
- 誰かに見せる前提で書かない(あとで捨ててもOK)
ということ。書いた瞬間に問題が解決するわけではありませんが、頭の中でぐるぐるしていた感情が「紙の上に降りてくる」感覚が出てくるかもしれません。
3. 「ありがとう」と「うれしかった」を言葉にする
感謝やうれしさを言葉にすることも、感情力トレーニングの大切な一歩です。
- 家族が洗い物をしてくれたときに「助かったよ、ありがとう」と伝える
- 買い物で丁寧に対応してくれた店員さんに「親切にしてくれてうれしかったです」と言う
など、ほんの一言でかまいません。
言葉にすることで、自分の中のうれしさやありがたさに改めて気づくことができますし、相手との距離も少しずつ縮まっていきます。感謝を伝えることは、自分の感情を優しく外に出す練習にもなります。
4. 信頼できる人に「弱音」を一言だけシェアする
がんばり屋さんほど、「人に弱音を見せるのが苦手」という方も多い印象があります。私自身もそうでした。
そんなときは、次のように「一言だけ弱音をシェアしてみる」のも一つの方法です。
- 「実は最近、ちょっと将来のことが不安でさ」
- 「このところ、少しやる気が出なくて困っているんだよね」
話す相手は、家族でも友人でも、オンラインのコミュニティでもかまいません。「全部わかってもらおう」と思うとハードルが上がってしまうので、「とりあえず一言だけ出してみる」くらいの気持ちで大丈夫です。
弱音を出しても、意外と相手は引いたりしません。むしろ「実は自分もそうなんだ」と、本音の会話が始まるきっかけになることも多いように感じます。
5. 体を整えて「感情を助ける」
最後に、大切なポイントをひとつ。感情力は心の話ではありますが、土台になっているのはやはり体です。
- よく眠れた日は、イライラが少し減っている
- 軽く体を動かした後は、気分がスッキリしている
そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。激しい運動をしなくても、
- 家の周りをゆっくり散歩する
- テレビを見ながら、足首や肩を軽く回す
- 寝る前に、スマホを見る時間を少し減らしてみる
といった小さな工夫だけでも、感情の安定をそっと後押ししてくれます。
私自身、ライザップでのボディメイクに挑戦したとき、体重や筋肉量の変化も大きかったのですが、同じくらい「気持ちが前向きになるスイッチ」が増えたと感じています。そのときのことは、リバウンド経験者がライザップで変わった体験談【和久井編】でも詳しく書いていますが、筋トレや食事管理だけでなく、「自分を大事に扱う感覚」を取り戻したことが、今の健康寿命づくりの原点になっています。
パートナーや家族と一緒に育てる感情力
「正論」より「気持ちの交換」を増やす
夫婦や家族との会話では、つい「どちらが正しいか」の言い合いになってしまうことがあります。そんなときこそ、感情力の出番です。
たとえば、こんな言い方の違いをイメージしてみてください。
- ×「あなたはいつも片づけないからダメなんだ」
- ○「片づいていないと、私が落ち着かなくなってしまうんだ」
前者は「相手を責める言葉」、後者は「自分の気持ちを伝える言葉」です。どちらを言われたら、話を聞こうという気持ちになれるかは、想像しやすいですよね。
完璧にできなくても、「正論をぶつける前に、自分の気持ちを一言添えてみる」というだけで、会話の雰囲気が少しずつ変わっていきます。
お互いの「不安」や「希望」を話す時間をつくる
人生後半は、夫婦や家族それぞれが、将来についていろいろな不安や期待を抱えている時期でもあります。
ときどきでかまわないので、テレビを消して、
- 「これから10年、どんなふうに過ごせたらいいと思う?」
- 「今いちばん心配していることって、実は何?」
といったテーマで、ゆっくり話してみる時間をつくってみるのもおすすめです。
すぐに答えが出なくても、「お互いに同じような不安を抱えていたんだな」と分かり合えるだけで、感情の負担が軽くなることがあります。感情力は、一人で鍛えるだけでなく、家族との対話の中で育っていく力でもあります。
一人で抱え込まないための公的なサポートや情報
ここまで、個人や家族でできる感情力トレーニングを中心にお話ししてきました。ただ、どんなに意識していても、心がどうにも苦しくなる時期は誰にでもあります。
そんなときは、「これくらい我慢しないと」と抱え込まずに、公的な相談窓口や地域のサービスを頼ることも、大事な選択肢のひとつです。
- お住まいの市区町村が行っている「こころの健康相談」や「高齢者向けの相談窓口」
- 地域包括支援センターでの生活や介護、健康に関する相談
- 自治体や医師会などが実施する健康講座やメンタルヘルス講座
こうした場では、心や体に関する不安を専門職に相談できたり、同じような悩みを抱える人たちと情報交換できたりします。「こんなことで相談していいのかな」と思うような小さな心配ごとも、丁寧に聞いてくれるところが多いので、気になる方はお住まいの自治体のホームページなどを一度のぞいてみると良さそうです。
国の白書でも、「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会」に向けて、地域や学校、職場などでの取り組みの重要性が語られています。感情力を育てることは、個人の問題であると同時に、社会全体のテーマでもあるのだと感じさせられます。
人生後半は「感情の筋トレ期」
ここまで、「体力」よりも「感情力」が人生後半の幸せや健康寿命を支えてくれる、というお話をしてきました。
もちろん、体を動かすことや食事を整えることも、とても大切です。ただ、それだけでは追いつかない心の揺れや、不安や孤独感に出会ったとき、私たちを支えてくれるのが感情力です。
- 自分の感情に気づき、否定せずに受け止めること
- 小さなセルフケアを、自分で選べるようになること
- 家族や友人と、本音を少しずつ分かち合えるようになること
- つらいときには、公的なサポートを頼る勇気を持つこと
どれも、今日から少しずつ始められることばかりです。筋肉と同じように、感情力も「いきなり完璧」には育ちません。むしろ、
「ときどき失敗しながら、それでもまたやり直せる」
そんな柔らかさこそが、人生後半の感情力のいちばんの魅力なのかもしれません。
体力がゆっくり変化していくこれからの時間を、「もう若くないから」とあきらめてしまうのか、「ここからは感情力を育てていく期間なんだ」ととらえ直すのかで、見えてくる景色は大きく変わってきます。
この記事が、「これからの自分の感情と、もう少し仲良くなってみようかな」と思うきっかけになればうれしいです。人生後半の健康寿命は、まだまだここから伸ばしていけます。一緒に、自分のペースで育てていきましょう。

