健康寿命と「1日1万歩」の正しい付き合い方

ウォーキングが体に良いことは、きっと多くの方が肌で感じていると思います。
そして一度は耳にしたことがあるのが「1日1万歩」という目標ではないでしょうか。
ただ、40代・50代・60代・70代と年齢を重ねてくると、仕事や家事で忙しかったり、ひざや腰の不安があったりして、毎日1万歩という数字にプレッシャーを感じてしまうこともありますよね。
この記事では、「1日1万歩」をムリなノルマにするのではなく、健康寿命を伸ばすための道具として上手に使う考え方をまとめました。
歩数の考え方だけでなく、続けるためのコツや、体をいたわる歩き方も一緒に整理していきます。
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この記事の前提と注意点
まず最初に、大切な前提を共有させてください。
- この記事は、健康づくりのヒントや考え方をお伝えするもので、医療行為や治療そのものをすすめるものではありません。
- 持病がある方や、歩くと痛み・強い息切れが出る方は、自己判断で運動量を増やす前に、かかりつけ医や専門職に相談することが大切とされています。
- 運動の基準や考え方は、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」や、2023年に公表された「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(アクティブガイド2023)」などを参考にしています。
こうした公式資料でも、「一気にたくさん運動する」というより、「今より少しでも体を動かす時間を増やす」「座りっぱなしを減らす」ことが大事だと紹介されています。
そもそも「1日1万歩」はどこから来たのか?
「1日1万歩」という数字は、医学的な厳密な線引きというより、昔の万歩計の商品名やキャッチコピーから広まったと言われています。
その後、いろいろな研究で「ある程度の歩数を確保すると、生活習慣病のリスクが下がりやすい」といったデータが出てきて、目標値として定着していった背景があるようです。
ただし厚生労働省の基準では、「必ず1万歩でないといけない」という言い方はされていません。
むしろ、体を動かす量が少ない人が+10分、+1000歩くらい増やすことでも、健康リスクが下がる可能性があると紹介されています。
つまり、「1日1万歩」はあくまで“わかりやすい目安の一つ”であって、万人共通のノルマというより、
- 自分の体力
- 生活リズム
- 持病や体調
に合わせて、柔軟に考えていく数字だと捉えた方が安心です。
健康寿命の視点で見ると「歩数」より大事なもの
1. 「何歩歩いたか」より「どんな状態で歩いているか」
健康寿命とは、「できるだけ自分の足で、行きたい場所へ行ける時間」をどれだけ長く保てるかという考え方です。
この視点で見ると、単純な歩数よりも、
- 息が少し弾むくらいのほどよい強度で歩けているか
- ひざや腰に無理な負担をかけていないか
- 翌日まで疲れを残さず、また歩こうと思えるか
といった「歩き方の質」が、とても大切になってきます。
厚生労働省のアクティブガイドでは、中強度(少し息が弾む程度)の身体活動を週に合計60分以上行うことや、座りっぱなしの時間を減らすことが健康づくりのポイントとしてまとめられています。
この「中強度の活動」は、少し速めのウォーキングでも十分に達成できるとされています。
2. 「一気に1万歩」より「こま切れ+積み重ね」
また、1回で長時間歩くよりも、
- 通勤や買い物で少し遠回りをする
- エレベーターではなく階段を使う
- 夕方に10分だけ近所をひと回りする
といったこま切れの積み重ねが、1日のトータルではかなり大きな歩数になります。
国の資料でも、日常生活の中の「生活活動」と、意識的に行う「運動」を合わせて身体活動量を考えることが大切だと説明されています。
がんばって長時間歩く日があっても、翌日以降にまったく動かなくなってしまうより、毎日ちょっとずつ動き続ける方が、健康寿命にはプラスになりやすいと考えられています。
「歩きすぎ」や「気合いの入れすぎ」が落とし穴になることも
真面目な方ほど、
- 「1万歩に届かなかった…」と落ち込んでしまう
- 雨の日でも無理をして歩きに出てしまう
- 急に歩数を増やしてひざや足首を痛めてしまう
というパターンにはまりがちです。
横浜市の地域の健康づくり計画でも、「歩数計を持つだけではなく、正しい姿勢の歩き方の講座などを通して、無理のないウォーキングを広めていく」取り組みが紹介されています。
これは、歩数だけを追いかけてしまうと、かえって体を痛めたり挫折につながることもあるという現場の実感の表れだと思います。
痛みや違和感は「サボり」ではなく「体からのメッセージ」
特に40代以降は、
- ひざの違和感
- 足裏の痛み
- 腰の重だるさ
など、ちょっとしたサインが出やすくなります。
こうしたサインは「根性が足りない」という話ではなく、体からの大事なメッセージです。
痛みを我慢して歩くよりも、
- その日は少し歩数を抑える
- ストレッチやマッサージでケアする
- 続くようなら整形外科や専門家に相談する
といった対応をした方が、結果的には健康寿命を守りやすいと考えられています。
「1日1万歩」とどう付き合う? 3つのステップ
ステップ1:まずは「今の自分の平均歩数」を知る
いきなり「今日から1万歩!」と決めてしまうと、スタートラインが高すぎて苦しくなりがちです。
おすすめなのは、まず1週間ほど、意識せず普段どおりに過ごしながら歩数を記録してみることです。
最近は、
- スマホのヘルスケアアプリ
- 腕時計型の活動量計
- 昔ながらのシンプルな万歩計
など、歩数を測る手段はいろいろあります。
「このくらいが、今の自分の標準なんだな」とわかるだけでも、気持ちがずいぶん楽になります。
ステップ2:いきなり1万歩ではなく「+1000歩」ペースで
もし、今の平均が3000歩くらいなら、いきなり1万歩はかなりハードです。
ここで役立つのが、アクティブガイドでも使われている「+10分」「+1000歩」くらいから始めるという考え方です。
例えば、
- 普段3000歩 → まずは4000歩を目安にしてみる
- 慣れてきたら5000歩〜6000歩を目指す
- 「今日は調子がいいな」という日に少し多めに歩く
というように、少しずつ階段を上がっていくイメージで歩数を増やしていくと、体も心もついてきやすくなります。
ステップ3:「毎日」より「1週間トータル」で見る
さらにおすすめなのが、
- 「1日1万歩」ではなく「1週間で○万歩」という発想
です。
例えば、1週間で5万歩なら、平均すると1日約7000歩です。
平日は仕事で歩きにくくても、
- 休日に多めに歩いて帳尻を合わせる
- 雨の日は少なめ、晴れの日に少し多め
という調整がしやすくなります。
日によって増減があっても、1週間トータルで見たときに「先週より少し増えたな」と感じられれば、十分に前進です。
数字を味方につけながら、自分を責めない歩数管理を意識してみてください。
健康寿命を意識した「正しい歩き方」のポイント
同じ5000歩でも、姿勢や足運びで体への負担はかなり変わってきます。
ここでは、健康寿命の視点から押さえておきたい「やさしい歩き方のコツ」をまとめます。
1. 姿勢は「頭のてっぺんをやさしく引っ張られている」イメージ
横浜市のウォーキング講座でも、歩く前の姿勢づくりとして
- 目線はまっすぐ遠く
- あごを引き、背筋を伸ばす
- 肩の力を抜いて自然に腕を振る
といったポイントが紹介されています。
難しく考えすぎると固くなってしまうので、
- 「頭のてっぺんを、上から軽く糸でつられている」
ようなイメージで立ってみると、自然と背筋が伸びて、胸も開きやすくなります。
2. 歩幅は「やや広め」、かかとからやさしく着地
歩幅が狭すぎると、チョコチョコ歩きになって疲れやすくなります。
逆に広げすぎると、ひざや股関節に負担がかかりやすくなります。
目安としては、
- 普段よりほんの少しだけ歩幅を広く
- かかとからそっと着地して、つま先へと体重を移す
というイメージを持つと、スムーズに前へ進みやすくなります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、500歩・1000歩と意識しているうちに、少しずつ体が覚えてくれます。
3. 靴選びは「サイズ」と「足囲(ウィズ)」も大事
せっかく歩く習慣をつくっても、靴が合っていないと、足のトラブルや疲れの原因になりかねません。
国産メーカーのアシックスでは、足の長さだけでなく、足囲(ウィズ)やつま先の形なども含めて靴を選ぶことの大切さを、シューズサイズガイドとして紹介しています。
可能であれば、
- 専門店で足のサイズや足囲を測ってもらう
- 試し履きで、つま先に少し余裕があるかを確認する
- かかとが浮きすぎないか、靴ずれしないかをチェックする
といったところを意識して、「歩きたくなる靴」を一足用意しておくと、モチベーションもグッと上がります。
忙しい毎日でも歩数を増やす「ちょい足し」アイデア
ここからは、40代〜70代の方の生活シーンをイメージしながら、「がんばりすぎない歩数アップの工夫」を整理してみます。
通勤・仕事の中でできる工夫
- 電車通勤なら一駅手前で降りて歩く(最初は週1回からでもOK)
- エレベーターではなく階段を1〜2階分だけ使う
- 昼休みに会社の周りを10分だけ散歩する
- オンライン会議の前後で部屋の中をぐるっと歩く
僕自身も、ライザップに通っていた頃は、「仕事前に駅の周りを一周する」「帰りにコンビニを一軒遠回りする」といった小さな工夫を重ねていました。
そうしたスケジュールの組み立て方は、別記事の「忙しい人の通い方・スケジュール術」でもまとめていますので、時間の使い方に悩んでいる方は参考にしてみてください。
家事・プライベートでできる工夫
- 買い物はカートを押しながら少し遠回りして店内を歩く
- ゴミ出しのときに、家の周りを一周してから帰る
- テレビを見るとき、CMの間だけ立ち上がって足踏みする
- 電話をしながら、部屋の中をゆっくり歩く
ポイントは、「わざわざ運動の時間を作ろう」とがんばりすぎないことです。
「用事ついでに」「ながら」で歩数を増やしていくと、生活に自然となじんでいきます。
挫折しないためのメンタル・習慣づくり
1. 「歩けた日」を数える
人間の心理として、「できなかった日」ばかりに目が行きがちです。
そこでおすすめなのが、
- 歩けた日をカウントする
という発想です。
例えば、カレンダーに、
- 目標歩数の70%以上いけた日は「◯」
- それ以下でも、「いつもより歩けたな」と感じた日は「△」
といった印をつけてみます。
◯や△が増えていけば、それだけで十分な前進です。
2. 友人や家族と「ゆるい約束」をする
一人だと続けにくい場合は、
- 「週に1回だけ、一緒に公園を歩こう」
- 「毎朝、歩数のスクリーンショットを送り合おう」
といった、ゆるい約束を友人や家族と交わすのも一つの方法です。
真面目な約束よりも、「今日はちょっとサボった」「じゃあ明日多めに歩こうか」と笑い合えるくらいの距離感の方が、結果的には長続きしやすいように感じています。
3. ときどき「歩き方の棚卸し」をする
数か月に一度、
- 歩数の平均値
- 歩いた後の疲れ具合
- 体調の変化(よく眠れるようになった、足が軽くなった など)
を手帳やスマホにメモしておくと、自分なりの「歩き方のコツ」が見えてきます。
僕自身、ライザップで減量していたときも、「今日は疲れすぎた」「このペースなら気持ちよく続けられる」という感覚をメモしておくことで、ムリのないペース配分がつかめました。
そのあたりの試行錯誤は、「リバウンド経験者がライザップで変わった体験談【和久井編】」でも正直に書いていますので、「がんばりすぎてしまうタイプかも…」という方は、合わせて読んでいただけたら嬉しいです。
持病や不安があるときの歩数との付き合い方
高血圧や糖尿病、心臓・ひざの持病がある場合、
- 「運動したほうがいいのはわかっているけれど、どこまでやっていいのか不安」
と感じる方も多いと思います。
厚生労働省の身体活動・運動に関する資料でも、慢性疾患を持つ方が運動を行う際には、個々の体調や病状に応じて、強度や量を調整し、必要に応じて専門職の指導を受けることが大切だとまとめられています。
ポイントとしては、
- 主治医から「歩くのは控えてください」と言われていないかを確認する
- 薬の影響(血圧や心拍数の変化など)について説明を受けておく
- 息切れ・胸の痛み・強いめまいなどが出たら、すぐに中止して相談する
といったあたりを押さえつつ、
- 短時間・短い距離から試す
- 疲れたら素直に立ち止まる・座る
- 「調子が良い日」だけ歩数を少し増やす
といった、やさしいスタートが安心です。
まとめ:「1日1万歩」は“ゴール”ではなく“パートナー”
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 「1日1万歩」は、昔の万歩計のキャッチコピーなどから広まった目安の数字であり、すべての人のノルマではない。
- 健康寿命の視点では、歩数そのものよりも、無理なく続けられるペースと姿勢・歩き方の質がとても大切。
- 厚生労働省の「アクティブガイド」では、「今より10分多く体を動かす」「座りっぱなしを減らす」といった、小さな一歩が推奨されている。
- いきなり1万歩ではなく、今の平均歩数+1000歩くらいから始めて、週単位でトータル歩数を見ると続けやすい。
- 正しい姿勢・合った靴・体調に応じた調整を意識することで、ひざや腰への負担をやわらげながら歩ける。
- 「できなかった日」を責めるのではなく、「歩けた日」「少し増やせた日」を数え、自分を認めていくことが継続のカギ。
年齢を重ねるほど、「今から始めても遅いんじゃないか」と感じてしまうこともあるかもしれません。
でも、厚生労働省の資料や各自治体の取り組みを見ても、何歳からでも「今より少し多く動く」ことには意味があると繰り返し発信されています。
1日1万歩という数字は、あなたを追い立てるムチではなく、
- 「今日はどのくらい歩けたかな?」
- 「先月より少し増えたな」
と、自分の変化をやさしく見守るパートナーとして、うまく付き合っていけたら素敵だなと思います。
今日の一歩、明日の一歩が、数年後の「自分らしく歩ける時間」につながっていきます。
焦らず、でもあきらめず、自分のペースでいきましょう。

