健康寿命と体幹トレーニング、バランス感覚を鍛える

40代・50代・60代と年齢を重ねてくると、
- つまずきやすくなった
- 長く立っていると腰やひざがつらい
- 写真を見たら、昔より猫背になっていた
こんな変化を感じる場面が増えてくるかもしれません。
こうした小さな「変化」の裏側には、体幹の弱りやバランス感覚の低下がかくれていることがあるようです。逆にいうと、体幹とバランスをやさしく鍛えてあげることで、転倒予防や姿勢改善につながり、結果として元気に動ける時間=健康寿命を守りやすくなると考えられています。
この記事では、専門家の資料や自治体の取り組みも参考にしながら、人生後半からの「体幹トレーニング」と「バランスづくり」について、無理なく続けられる考え方と具体的なアイデアをまとめました。
激しい筋トレではなく、「今日からできる小さな工夫」を中心にお伝えしていきますので、気になるところから読んでいただけたらうれしいです。
目次(表示させると見出しが見られますよ!)
なぜ「体幹」と「バランス」が健康寿命のカギになるのか
体幹とは「胴体まわりの筋肉」全体のこと
体幹というと、腹筋をイメージされる方も多いのですが、実際には
- お腹まわり
- 背中
- 骨盤まわり
- お尻
など、胴体をぐるっと取り囲む筋肉全体を指します。
この体幹の筋肉は、
- 姿勢を支える
- 手足を動かすときの「土台」になる
- ふらついたときに体を立て直す
といった働きをしてくれるので、年齢を重ねるほど大切になってきます。
例えば内閣府や自治体の資料では、高齢期の転倒予防や寝たきり予防の一つとして、「筋力アップやバランス向上の体操」を勧めている例が多く見られます。東京都世田谷区の「世田谷いきいき体操」でも、筋力とバランスの両方を高める体操が紹介されており、『いくつになっても始めるのが遅いということはありません』という言葉が印象的です。
転倒は健康寿命を縮めやすいリスクの一つ
内閣府がまとめた資料では、高齢者が寝たきりや要介護になる原因の一つとして「転倒・骨折」が挙げられています。東京都荒川区の取り組みでも、転倒予防体操を独自に開発し、区民に広めている例が紹介されています。
転倒そのものは一瞬ですが、
- 骨折して長期入院になる
- その後、動くのがこわくなり、さらに筋力が落ちる
- 外出の機会が減って、人とのつながりも少なくなる
といった流れにつながることもあり、結果として健康寿命が縮まってしまうリスクが指摘されています。
だからこそ、「転ばないために何ができるか」を、早めの年代から少しずつ整えておくことが、将来の自分へのプレゼントにもなると感じています。
体幹とバランスを鍛えると、日常の動きがラクになる
体幹やバランスを鍛えると、次のような変化が期待できるとされています。
- 歩くときのふらつきが減り、足取りが軽く感じられる
- 階段の上り下りで、手すりに頼り過ぎなくてすむ
- 立ち上がる・かがむなどの動作がスムーズになる
- 姿勢が整い、肩こりや腰の負担が軽くなることもある
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」でも、日常生活での身体活動や筋力トレーニングが、生活習慣病予防だけでなく、ロコモティブシンドローム(運動器の衰え)や認知症リスクの低下にも関わる可能性があるとされています。
激しい運動をしなくても、「立つ・歩く・姿勢を保つ」ための土台づくりとして体幹を意識してあげることは、健康寿命を支える大事な一歩になりそうです。
40〜70代から始める、体幹とバランスの“ゆるチェック”
いきなり本格的なトレーニングを始める必要はありません。まずは、「今の自分の体幹とバランスはどんな状態かな?」と、やさしく確かめてみるところからスタートしてみましょう。
安全第一で試したい、かんたんなセルフチェック
以下は、あくまで目安としてのセルフチェック例です。転倒の不安がある方や、足腰・心臓・めまいなどの持病がある方は、無理をせず、主治医や専門職にも相談しながら行ってください。
(1)椅子からの立ち座りチェック
- ひじ掛けのない安定した椅子に浅く座ります。
- 足裏をしっかり床につけ、軽く前かがみになりながら立ち上がります。
- 再びゆっくり座る動作を、心地よい範囲で数回繰り返します。
このとき、
- 立ち上がるのにかなり時間がかかる
- 強く腕の反動に頼らないと立てない
- 立ち上がったときにふらつきが強い
と感じる場合は、体幹や太ももの筋力が少しお疲れ気味のサインかもしれません。
(2)机や壁を支えた片足立ちチェック
- 机や壁に片手を軽く添えて、まっすぐ立ちます。
- 片方の足を少しだけ床から離し、バランスを取ります。
- ぐらつきそうになったら、すぐに足を戻しましょう。
手を離して片足立ちを長く続ける必要はありません。「軽く支えがあっても、どのくらい安定していられるか?」を感じ取るくらいで十分です。
ふらつきが強い方は無理をせず、両足をついたまま、足の指で床をつかむようにしてバランスを感じるだけでも立派なトレーニングになります。
結果より「気づき」を大切にする
セルフチェックの目的は、「できる・できない」を判定することではなく、
- どの動きがやりやすくて、どこで不安定になるのか
- どのあたりに力を入れると安定しやすいのか
といった、自分の体の特徴に気づくことです。
スポーツ庁の資料でも、運動やスポーツは「できる範囲から少しずつ」取り入れることが重要だと紹介されています。適度な運動の継続が、健康寿命の延伸につながる可能性も示されていますので、「昨日より少しラクに立てたかも」「今日はここまでできた」という小さな変化を、前向きに受け止めてあげたいですね。
自宅でできる、やさしい体幹&バランストレーニング例
ここからは、自宅で無理なく続けやすい「体幹+バランス」を意識したメニューを、いくつかご紹介します。いずれも運動前後の体調に気を配り、痛みや強い違和感がある場合は中止してください。
1. 椅子に座ったままできる「お腹と背中のスイッチ入れ」
立った状態が不安な方や、まずはやさしいところから始めたい方に向いた、座位の体幹トレーニングです。
- 安定した椅子に腰かけ、背もたれから少し離れて座ります。
- 足裏を床にしっかりつけ、両手は太ももの上に軽く置きます。
- 背筋をスッと伸ばし、お腹をほんの少しだけ引き込むイメージで、呼吸をしながら10秒ほどキープします。
- ふっと力を抜き、背中もゆるめます。
背中やお腹に「じんわり力が入っているな」と感じられれば十分です。回数にこだわらず、テレビのCMの間だけなど、短い時間でこまめに行うと続けやすくなります。
ポイント
- 肩に力が入りすぎないよう、首まわりはリラックスする
- 息を止めず、ゆっくりと自然な呼吸を続ける
- 腰に痛みがあるときは無理せず、背もたれを軽く使ってもOK
2. 壁を使った「安全な片足バランス」
片足立ちはバランス感覚を鍛える代表的な動きです。ただし、支えがない状態で行うと転倒リスクもありますので、必ず壁や机を使い、足を上げる高さも低めにしておきましょう。
- 壁の横に立ち、片手を壁につけて体を支えます。
- 足幅は肩幅程度に開き、姿勢をまっすぐに整えます。
- 壁側と反対の足を、床から数センチだけ浮かせます。
- バランスを保ちつつ、数呼吸分キープします。
- 足を下ろし、反対側も同じように行います。
慣れてきたら、壁に添える手の力を少しずつ軽くしていくと、体幹で支える感覚をつかみやすくなります。フラッとしたらすぐに足を下ろし、「今日はここまで」と切り上げるのも大切です。
ポイント
- 視線はやや遠くを見ると、バランスが取りやすくなります。
- お腹とお尻に軽く力を入れ、背筋を伸ばす意識を持つ。
- 床がすべりやすい場合は、滑りにくい室内履きやヨガマットなどを利用する。
3. バランスボールがある場合の「ゆらぎ体幹タイム」
ご自宅にバランスボールがある方は、激しく弾ませなくても、「座る」だけで体幹トレーニングになります。
- バランスボールのサイズを、自分の身長に合ったものにする(購入時の目安表示を参考にしてください)。
- 壁やテーブルのそばで、両足をしっかり床につけてボールに腰かけます。
- 背筋を伸ばし、骨盤を前後にゆっくり「コロコロ」と転がすように、小さく動かしてみます。
- 慣れてきたら、左右にゆらす・円を描くように回すなど、少しずつ動きを増やします。
バランスボールに座るだけでも、お腹や背中、骨盤まわりの筋肉が自然と働きやすくなります。長時間続ける必要はなく、1〜2分を何回かに分けて行うくらいでも十分です。
ポイント
- 転倒防止のため、周りに物を置きすぎないようスペースを確保する。
- めまいが出やすい方は、動きを小さく、時間も短めにする。
- 体調がすぐれない日は、無理に乗らず、体調が落ち着いている日に行う。
日常生活を「体幹トレーニングの場」に変えるコツ
体幹トレーニングというと、「運動の時間をわざわざつくる」イメージが強いかもしれません。ただ、忙しい40〜70代には、日常生活の中で無理なく取り入れられる工夫が現実的だと感じています。
歩くときは「お腹とお尻」を意識してみる
歩くとき、次の2点だけ意識してみると、自然と体幹が働きやすくなります。
- 一歩踏み出すときに、お腹を軽く引き込む
- 足を後ろにけり出すときに、お尻の筋肉を意識する
この2つを意識するだけで、歩幅が少し広くなったり、姿勢がシャキッとしたりする方も多いようです。長時間続ける必要はなく、「家から駅まで」「スーパーの往復だけ」といった区間を決めて試してみると、負担が少なくてすみます。
家事の時間を「ながら体幹タイム」に
料理・洗い物・洗濯・掃除など、家事の時間は意外と「立ちっぱなし」が多いですよね。この時間を少しだけ体幹トレーニングに変えてみるのも一つの方法です。
- 歯みがき中は、両足の裏で床をしっかり押しながら、お腹とお尻に軽く力を入れて立つ
- キッチンでお湯が沸くのを待つ間、壁に手をついて軽い片足立ちをしてみる
- 掃除機をかけるとき、片足に偏らないよう、左右の足にバランスよく体重を乗せる
どれも、数十秒〜1分程度で終わる「ながら体幹」です。大切なのは、「完璧にやる」ことよりも、「思い出したときにサッとやる」くらいのゆるさで続けることだと思っています。
座り方とスマホの持ち方を少し見直す
長時間座っていると、どうしても背中が丸くなり、体幹の筋肉がサボりがちになります。デスクワークやテレビ時間が長い方は、次のポイントを意識してみてください。
- 骨盤を立てて座り、耳・肩・腰がなるべく一直線になるイメージを持つ
- 30〜40分に一度は立ち上がり、軽く背伸びや肩回しをする
- スマホを見るときは、顔を下げすぎず、画面を少し持ち上げる
目黒区の介護予防通信でも、体幹全体をよく動かすことや、日常的に姿勢を意識することが、円背(背中が丸くなる状態)の予防につながると紹介されています。「めぐろ手ぬぐい体操」のような、座ったままできる体操を取り入れている自治体も増えており、こうした資料もヒントになるかもしれません。
続けるためのコツ:がんばりすぎない“ゆる体幹”のすすめ
目標は「毎日10分」より「毎日どこかで1回」
厚生労働省の身体活動基準では、週あたりの運動量の目安なども示されていますが、運動習慣が少ない方にとって、いきなり数値目標を追いかけるのは負担が大きく感じられるかもしれません。
そこで私自身は、まずは
- 「毎日10分運動する」ではなく「毎日どこかで1回、体幹を意識する瞬間をつくる」
くらいの感覚から始めるほうが、続きやすいと感じています。
例えば、
- 朝、椅子に座ったときに背筋を伸ばす
- 通勤や買い物で歩くときに、お腹とお尻を意識する
- 夜、テレビを見ながら片足立ちを数秒試す
このどれか一つでもできたら、「今日はちゃんと体幹トレーニングをした」と、自分をほめてあげてください。小さな「できた」を積み重ねることが、結果的には大きな変化につながります。
記録をつけて「できた自分」を見える化する
体幹トレーニングは、目に見える変化が出るまで時間がかかることもあります。その間に、「あまり変わらないな…」と感じてやめてしまうのは、とてももったいないことです。
そこでおすすめなのが、
- カレンダーに「◎」「○」などのマークをつける
- スマホのメモアプリに「片足立ち10秒」「椅子スクワット3回」など一言だけ記録する
- ノートに、体調や気分とあわせて運動の内容を書く
といった「ゆるい記録」です。
記録を振り返ると、「意外と続いているな」「先月よりも回数が増えているかも」と、変化に気づきやすくなり、やる気の維持にもつながります。
仲間や家族と一緒に、楽しみながら続ける
一人でコツコツ続けるのが苦手な方は、家族や友人と「体幹&バランスチャレンジ」を共有してみるのもおすすめです。
- 夫婦でテレビを見ながら、片足立ち勝負をする
- 孫と一緒に、バランスボールに座って写真を撮る
- 地域の体操教室に参加して、仲間をつくる
内閣府や自治体の取り組みでも、「仲間と一緒に運動すること」が、継続の大きな力になると紹介されています。笑いながら取り組める環境は、心の健康にもプラスに働きそうです。
パーソナルトレーニングという選択肢もある
自分一人ではフォームや負荷の調整が不安な方や、「専門家にサポートしてもらいながら体幹やバランスを整えたい」という方は、パーソナルトレーニングという選択肢もあります。
私自身、ライザップに通って大きく体が変わった経験があり、その過程で体幹とバランスの大切さを身をもって感じました。その体験をまとめた記事もありますので、興味のある方は参考にしてみてください。
▶ リバウンド経験者がライザップで変わった体験談【和久井編】
もちろん、ライザップに限らず、地域の運動教室やフィットネスクラブなども含め、自分に合うサポートを探していくことが大切だと感じています。
安全に続けるために意識したいポイント
体幹トレーニングやバランス運動は、やり方によっては腰や膝に負担がかかったり、転倒リスクが高くなってしまうこともあります。最後に、安全面で押さえておきたいポイントを整理しておきます。
こんなときは、まず医療機関や専門職に相談を
次のような症状がある場合は、自分だけで判断せず、主治医や理学療法士などの専門職に相談することが勧められています。
- 歩くだけで強い息切れや胸の痛みが出る
- ふだんからめまいや立ちくらみが多い
- 腰や膝に強い痛みがあり、日常生活にも支障がある
- 過去に大きなケガや手術をしていて、運動してよいか不安がある
厚生労働省の身体活動ガイドでも、持病がある場合や運動に不安がある場合は、医療機関で相談してから始めることが紹介されています。この記事はあくまで一般的な情報であり、治療や診断を行うものではない点をご理解ください。
痛みは「がまんして乗り越える」より「いったん様子を見る」
若い頃、「多少の痛みは気合で乗り越える」といった経験をしてきた方も多いかもしれません。ただ、40代以降は、痛みを無理して続けることで、かえって悪化してしまうケースも少なくないようです。
体幹トレーニング中に
- ズキッとした鋭い痛み
- いつもと違う違和感
- 動かしにくさやしびれ
などが出た場合は、その動きをいったん中止し、様子を見てください。それでもおさまらない場合や、繰り返し起こる場合は、早めに受診して原因を確認してもらうことが、結果的に健康寿命を守ることにつながります。
公式の体操資料や動画も上手に活用する
最近は、厚生労働省や自治体、地域包括支援センターなどが、転倒予防体操や介護予防体操のパンフレット・動画を公開している例が増えています。
- 厚生労働省:STOP!転倒災害プロジェクトの体操紹介ページ
- 各自治体の介護予防体操(例:世田谷いきいき体操 など)
こうした資料は、安全面に配慮しながら、筋力やバランスを高めるための動きが工夫されています。「どんな姿勢で動けばよいか」「どのくらいの強さが適切か」をイメージしやすくなるので、参考にしてみるのも良さそうです。
まとめ:転ばない体づくりは、今日の“小さな一歩”から
今回は、「健康寿命と体幹トレーニング、バランス感覚を鍛える」というテーマで、
- なぜ体幹とバランスが健康寿命のカギになるのか
- 自宅でできる、やさしい体幹&バランストレーニング例
- 日常生活そのものを体幹トレーニングに変える工夫
- 続けるためのメンタル面のヒントと、安全に行うための注意点
といった内容をお伝えしました。
健康寿命というと大きなテーマですが、実際にできることは意外と身近です。
- 椅子に座ったときに背筋をスッと伸ばしてみる
- 歩くときに、お腹とお尻を意識して一歩一歩踏み出す
- 壁に手を添えて、数秒だけ片足立ちを試してみる
こうした小さな積み重ねが、数か月・数年と続いたとき、
- つまずきにくくなった
- 長く歩けるようになった
- 姿勢が良くなり、見た目の印象も変わった
といった、うれしい変化として現れてくるのではないかと思います。
年齢を重ねるほど、「もう遅いかな」と感じやすくなりますが、自治体の体操事業などでも「いくつになっても始めるのが遅いということはない」と繰り返し伝えられています。私自身も、ライザップでの経験を通して、50代以降でも体はきちんと応えてくれると実感しました。
今日この記事を読んでくださったこと自体が、すでに一歩目だと思います。ここから、
- 「椅子に座ったら背筋を伸ばす」
- 「歯みがき中だけお腹を少し引き締める」
- 「テレビを見ながら片足立ちを数秒試してみる」
そんな“小さな体幹トレーニング”を、できる範囲で取り入れてみてください。
転ばない体・しなやかな姿勢・軽やかな足取りは、今日の一歩の積み重ねから。あなたの健康寿命が、少しでも伸びていくきっかけになればうれしいです。

