【健康寿命】60代の高血圧対策は薬より“呼吸”がカギだった

今回は「60代の高血圧対策は薬より“呼吸”がカギだった」という、ちょっと攻めたタイトルをつけましたが、最初に大事なことをお伝えさせてください。
高血圧の治療の基本は、あくまで医師の診断と指示にもとづく治療(薬+生活習慣の見直し)です。この記事は「薬はいらない」「呼吸さえしていれば大丈夫」という話ではありません。
ここでお話ししたいのは、薬や食事・運動と同じくらい、もしくはそれ以上に続けやすい“ゆっくりした呼吸”という日常ケアの考え方です。うまく取り入れることで、60代からの「元気に動ける時間=健康寿命」を少しでも長く守っていけるのではないか…という提案だと思って読んでいただけたらうれしいです。
目次(表示させると見出しが見られますよ!)
60代の高血圧、「寿命」よりも「健康寿命」をどう守るか
高血圧は「今元気だから大丈夫」では語れない
高血圧は、よく「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と表現されることがあります。自覚症状がほとんどないまま、少しずつ血管に負担をかけていくからです。
厚生労働省の e-ヘルスネットによると、日本高血圧学会の基準では、診察室で測った血圧が上(収縮期)140mmHg以上、または下(拡張期)90mmHg以上になると高血圧と診断されるとされています(詳しくは 「高血圧」 も参考にしてください)。
家庭で測る「家庭血圧」の場合は、診察室より少し低めの値が基準とされ、朝・晩に落ち着いた状態で測ることが推奨されています。
60代になると、血管のしなやかさが低下したり、ホルモンの変化やストレス、運動不足、塩分の摂りすぎなどが重なり、高血圧になりやすい年代だと言われています。血圧が高い状態が長く続くと、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが上がることが知られていますが、ここで大事にしたいのは「病気になるかどうか」だけではありません。
私たちが守りたいのは、自分の足で歩き、好きな人と会い、行きたい場所に行ける時間=健康寿命です。血圧のケアは、その土台づくりの一つだと考えています。
60代で血圧が上がりやすくなる背景
60代で血圧が上がりやすくなる理由には、次のようなものが重なりやすいと言われています。
- 長年の食生活(塩分、脂質、アルコールなど)の積み重ね
- 運動不足や筋肉量の低下による代謝の変化
- 仕事・家族・お金・健康など、多方面からのストレス
- 睡眠の質の低下や、夜中のトイレによる中途覚醒
- 更年期〜ポスト更年期にかけてのホルモンバランスの変化(男女とも)
これらは「どれか一つ」が原因というより、小さな要因が積み重なって血圧に表れてくるイメージに近いと思います。だからこそ、「一発逆転の裏ワザ」を探すよりも、日常の小さなケアを増やしていくことが現実的です。
その中で、年齢や体力に関係なく取り入れやすいのが、今回のテーマである“ゆっくりした呼吸”です。
なぜ“ゆっくりした呼吸”が血圧ケアの味方になると言われるのか
自律神経と血圧の関係
血圧は、心臓や血管だけでなく、自律神経(交感神経と副交感神経)とも深く関わっています。
- 交感神経:活動モード。血圧や心拍数を上げ、体を「戦闘モード」「仕事モード」に切り替える役割。
- 副交感神経:休息モード。血圧や心拍数を下げ、消化を促し、体を「お休みモード」に戻す役割。
ストレスが続いたり、常にあれこれ考えごとをしていると、交感神経のスイッチばかり入りやすくなり、血圧も高めに傾きやすいと考えられています。
この自律神経のバランスを整える方法の一つとして、「ゆっくりした呼吸」が注目されています。特別な器具がなくても、椅子に座ってできるのが魅力です。
ゆっくり呼吸で血圧が下がったという研究報告も
国内外では、1分間に6回前後のゆっくりした呼吸(いわゆるスロー呼吸)を続けると、収縮期血圧が数mmHg下がったという報告もあるようです。腹式呼吸を行った場合、拡張期血圧が安静時と比べて低下したという国内の研究もあります(詳細は理学療法分野の研究報告などが参考になります)。
もちろん、こうした研究の結果は「皆さんが同じようにやれば必ず同じだけ血圧が下がる」という意味ではありませんが、呼吸という、ごく日常的な動作にも血圧とのつながりがあることを示していると言えそうです。
呼吸は「薬の代わり」ではなく「土台づくり」
ここで、もう一度大事な点を整理します。
- 高血圧治療の中心は、医師の指示による薬物療法と生活習慣の見直し。
- 呼吸法は、それらを補う日常ケアの一つとして考える。
- 薬を飲んでいる方が呼吸法を取り入れてもよいかどうかは、念のため主治医に相談しておくと安心。
私自身、ライザップで本気ダイエットに取り組んでいた頃、体重や食事、運動だけでなく、「どうやって心を落ち着けるか」が血圧にも影響していると感じる場面が何度もありました。呼吸は、その「心を落ち着けるスイッチ」の一つだと捉えるとわかりやすいかもしれません。
60代から始めやすい「ゆっくり呼吸」の基本ステップ
まずは安全確認:こんな場合は医師に相談を
呼吸法は基本的に安全な方法とされていますが、次のような持病や症状がある方は、自己判断で無理をするよりも、かかりつけ医に一度相談してから始めると安心です。
- 心不全や重い不整脈など、心臓の病気がある
- めまい・ふらつきが出やすい
- 呼吸器の病気があり、息苦しさを感じやすい
- 最近、血圧や薬の量が大きく変わった
また、呼吸法をしている途中で胸の痛み・強い息苦しさ・ひどい頭痛・めまいなどが出た場合は、すぐに中止して、必要に応じて医療機関を受診してください。
基本の「ゆっくり呼吸」〜4−2−6秒を目安に
ここでは、椅子に座ってできる、ごく基本的なゆっくり呼吸の一例をご紹介します。秒数はあくまで目安なので、「少し楽に続けられるペース」に調整していただいて大丈夫です。
- 背もたれのある椅子に腰かけ、足の裏を床につける。肩の力を抜き、手はお腹や太ももの上に置く。
- 目を閉じるか、少し遠くをぼんやり見る。
- 4秒かけて鼻から息を吸う(お腹がふくらむように意識)。
- 2秒ほど息を止める(つらくない範囲で)。
- 6秒かけて口または鼻から息を吐く(肩の力が抜けていくイメージ)。
- これを5〜10回ほど、無理のない回数で続ける。
ポイントは、「深く」よりも「ゆっくり」「心地よく」です。がんばって大きく吸おうとすると、かえって苦しくなったり、めまいや頭痛の原因になってしまうことがあります。
慣れてきたら、「1分間に6回くらいのペース(1呼吸10秒ほど)」を目安にしてみるのも一つの方法です。途中で苦しくなったら、いつでも普通の呼吸に戻してOKです。
血圧計のそばで行う「呼吸+測定」ルーティン
ゆっくり呼吸を日常に根づかせるには、すでにある習慣とセットにするのがおすすめです。60代の方は、すでに毎日血圧を測っている方も多いと思います。
例えば、次のような流れです。
- 朝、トイレをすませ、軽く着替えたあとに椅子に座る。
- 1〜2分、ゆっくり呼吸をしてから血圧測定をする。
- 数値を手帳やスマホアプリに記録し、その日の体調や気分も一言メモしておく。
家庭血圧の測定方法については、日本高血圧学会のガイドラインをもとに、国産メーカーのオムロン ヘルスケアが詳しく解説しています。
「血圧の正しい測り方(オムロン ヘルスケア)」では、
- 朝は起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前に測ること
- 座って1〜2分安静にしてから測ること
- 上腕で測る家庭血圧計を使うこと
などが紹介されています。呼吸法を取り入れる場合も、こうした基本を大切にしながら、「測る前の1〜2分をゆっくり呼吸タイムにする」と考えると、無理なく続けやすいと思います。
呼吸だけに頼らない、「生活習慣+呼吸」のセットで考える
塩分とのつき合い方をゆるやかに見直す
厚生労働省などがまとめた資料では、高血圧の発症・悪化には生活習慣が深く関係しており、食塩の摂り過ぎを控えることが重要だとされています(「栄養・食生活と高血圧」 も参考になります)。
とはいえ、「今日から1日6g未満!」と完璧を目指しすぎると、ストレスになって続きません。60代からの塩分ケアは、次のような“ゆるい一歩”から始めるのも良いと思います。
- みそ汁は「具だくさん+汁は少なめ」にする
- 漬物や佃煮を「毎食」ではなく「1日1回」にしてみる
- しょうゆやソースは「かける」から「少量つける」に変える
- 外食のスープやラーメンの「完飲」は控えてみる
こうした食事の工夫に呼吸法が加わることで、体の外側(食事)と内側(自律神経)の両方から血圧をケアするイメージになります。
適度な運動と筋肉量を保つことも大切
同じく厚生労働省の資料では、高血圧の予防・改善には、食事だけでなく、習慣的な運動も有効だとされています(「高血圧症を改善するための運動」 など)。
60代からの運動は、「きつい筋トレ」よりも、
- いつもより少し長く歩く・階段を使う
- テレビを見ながら、ゆっくりスクワットやかかと上げを数回
- 椅子に座ってのストレッチやラジオ体操
といった「息を弾ませすぎないレベル」から始めるのが安心です。運動中も、呼吸を止めず、ゆったりした呼吸を保つことがポイントになります。
私もライザップでのダイエット中は、トレーナーさんに「呼吸を止めないで」「吐きながら力を入れて」と何度も声をかけられました。呼吸が乱れていると、それだけで血圧は上がりやすくなります。「動くときほど、呼吸を意識する」という感覚は、今も日常生活で活きています。
睡眠・ストレスと呼吸の関係
睡眠不足や不規則な生活も、高血圧のリスクを高める要因の一つとされています。寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるという方は多いかもしれません。
そんなときにも、ゆっくり呼吸は役立ちます。
- 布団に入ってから、10回だけゆっくり呼吸をする
- 夜中に目が覚めたとき、スマホを見る前に、まず数回ゆっくり呼吸をする
- イライラしたとき、「ひとこと言う前に3回ゆっくり呼吸」を自分ルールにする
呼吸だけですべてのストレスが消えるわけではありませんが、「一度立ち止まる間」をつくることで、その後の行動や気持ちの持ち方が変わることがあります。それが結果的に、血圧にも良い方向に働く可能性があると考えています。
薬と上手につき合いながら呼吸を取り入れるコツ
薬をやめる・減らす判断は必ず医師と一緒に
ここまで読んでくださった方の中には、「呼吸で血圧が下がるなら、薬を減らせるかも?」と期待してくださった方もいるかもしれません。
気持ちはよくわかるのですが、薬の増減を自分の判断だけで行うのはとても危険です。血圧の数値だけでなく、これまでの病歴や他の病気、飲んでいる薬の種類など、総合的に考えて治療方針は決められています。
もし「呼吸法や生活習慣を見直して、血圧が少し下がってきた気がする」と感じたら、
- 家庭血圧の記録(できれば1〜2ヶ月分)
- 運動や食事、呼吸法など、取り組んでいることのメモ
- 実際に体調がどう変わったかの感想
を持って、主治医に相談してみてください。医師と一緒に経過を見ながら、薬の量や種類を調整していく方が、結果的に安全で、納得感のある治療につながると感じています。
「測る・記録する・振り返る」で変化を見える化する
呼吸法の良いところは、「やったか・やらなかったか」が自分にしかわからない、という点でもあります。誰かに見せる必要はないので、失敗してもやり直しがいくらでもきくのです。
一方で、続けているつもりでも、実際には「数日に一度しかやっていなかった」ということもよくあります。そこでおすすめしたいのが、
- 血圧と一緒に「その日ゆっくり呼吸をした回数」もメモする
- 1週間に1回、「今週できたこと」を振り返って自分をほめる
というシンプルな記録習慣です。
私は、ライザップでの減量期に、毎日の食事・運動・体重・気分を全部ノートに書き出していました。そのときの記録は、「ライザップ・高血圧オヤジ54歳の挑戦※減量期の全記録!」という記事にまとめていますが、今振り返っても「記録があったから、続けられた」と感じています。
呼吸法も同じで、「今日は朝と夜にできた」「今週は5日続いた」という事実が見えると、自信につながります。血圧の数値だけでなく、「続けられている自分」をほめることも、健康寿命を伸ばすうえで大きな力になると思っています。
今日からできる「1日3回・ゆっくり呼吸」チャレンジ
ステップ1:時間を決める
まずは、次の3つのタイミングのうち、できそうなものを選んでみてください。
- 朝:血圧を測る前の1〜2分
- 昼:食後にコーヒーやお茶を飲む前の1分
- 夜:テレビやスマホをやめて寝室に向かう前の数分
全部やろうとしなくて大丈夫です。最初は1日1回からでも十分ですし、「今日はできなかったな」と思ったら、翌日からまたゆるっと再開すればOKです。
ステップ2:「回数」より「心地よさ」を優先する
呼吸法というと、「1日何分」「何セット」といった数字を意識しがちですが、60代からの健康寿命を考えると、回数よりも「心地よさ」と「続けやすさ」を優先したほうが長続きしやすいと感じます。
例えば、
- 椅子に座り、10回ゆっくり呼吸をするだけの日
- いつもより余裕がある日は、血圧測定前に2〜3分かけて行う日
のように、その日の体調や気分に合わせて、「自分で決めていい」ことにしてしまいましょう。健康法は、「やらなきゃ…」という義務感になると、一気に重くなってしまいます。
ステップ3:小さな変化を楽しむ視点を持つ
呼吸法を続けていると、次のような小さな変化に気づくことがあります。
- 朝のイライラが少し減った気がする
- 夜、布団に入ってから眠りに入りやすくなった
- 血圧の「バラつき」が少し落ち着いてきたように見える
もちろん、これらがすべて呼吸法のおかげとは限りません。ただ、自分の体の変化に気づくセンサーが少しずつ敏感になっていく感覚は、健康寿命を考えるうえでとても大切です。
60代からの身体は、若いころのように「ちょっと無茶をしてもなんとかなる」状態ではありません。その一方で、小さな習慣の変化が、その後の10年・20年に大きな違いを生む年代でもあると感じています。
まとめ:薬+生活習慣+呼吸で、60代からの血圧ケアを「自分ごと」に
ここまで、「60代の高血圧対策は薬より“呼吸”がカギだった」というテーマで、呼吸と血圧の関係、ゆっくり呼吸の取り入れ方、生活習慣との組み合わせなどをお話ししてきました。
最後に、大事なポイントを改めて整理します。
- 高血圧の診断や治療は、必ず医師の指示にもとづいて行う。
- 呼吸法は、薬や生活習慣の見直しを支える日常ケアとして考える。
- 1分間に6回前後のゆっくり呼吸などが血圧に良い影響を与えたという研究報告もあるが、効果には個人差がある。
- 家庭血圧計での測定前後にゆっくり呼吸を取り入れ、数値と体調の変化を記録するのがおすすめ。
- 食事(塩分・バランス)、運動、睡眠、ストレスケアとセットで考えることで、健康寿命の土台づくりにつながる。
呼吸は、いつでも・どこでも・お金をかけずにできる、最も身近なセルフケアのひとつです。60代からの血圧対策に、薬だけに頼らない「3本柱」=薬+生活習慣+呼吸という発想を加えてみませんか。
「今からでも間に合うのかな…」と不安になる日もあるかもしれません。でも、ゆっくり息を吸って、ゆっくり吐くというたったひと呼吸からでも、未来の自分への投資は始められます。
今日この記事を読んでくださったタイミングが、あなたの「ゆっくり呼吸デビュー」のきっかけになれば、とてもうれしいです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法や効果を保証するものではありません。持病や治療中のお薬がある方は、必ずかかりつけ医と相談しながら、ご自身に合った方法を検討してください。

