【健康寿命】70代でも食欲を保つ“味覚リセット”法

70代になると、「昔より味が濃くないと物足りない」「前ほど食が進まなくなった」という声をよく聞きます。体を思って薄味にしようとすると、今度は「味がしない」「おいしくない」と感じてしまい、結局また濃い味に戻ってしまう……そんなジレンマもありますよね。
ただ、味付けが濃くなりすぎると、喉が渇きやすくなったり、胃腸が重く感じられたりして、かえって食欲が落ちることもあるようです。健康寿命を考えると、「おいしく、無理なく、ほどよい薄味に慣れていく」工夫が大切になってきます。
この記事では、70代でも食事を楽しみ続けるための「味覚リセット」をテーマに、やさしく実践できるアイデアをまとめました。難しい決まりや厳しい数字の話ではなく、今日から試せる小さな工夫として読んでいただけたらうれしいです。
目次(表示させると見出しが見られますよ!)
1.なぜ70代になると「味が濃く」なりやすいのか
1-1. 味覚のセンサー「味蕾」が少しずつ変化していく
舌の表面には、味を感じるセンサーのような「味蕾(みらい)」があります。この味蕾は年齢とともに少しずつ減ったり、働きが弱くなったりすると考えられています。そのため、同じ味付けでも「昔ほど味を感じにくい」と感じる方が増えていくようです。
すると、「もう少し塩を足したほうがおいしい」「砂糖を少し足したほうが満足できる」といった形で、少しずつ味が濃くなりやすくなります。自分では「いつもと同じつもり」でも、家族から「最近ちょっと味が濃いね」と言われることがあるのは、この変化も関係しているのかもしれません。
1-2. 長年の食習慣で育った“好み”も大きい
味覚は、先天的なものだけでなく、長年の食習慣によって育っていく部分も大きいと言われます。若い頃から濃い味のおかず、ラーメンのスープを飲み干す習慣、漬物や佃煮が好きだった方は、その「おいしさの基準」が体にしみついています。
また、地域によっても味付けの濃さには違いがあります。冬に保存食として塩蔵品を多く食べる地域では、どうしても塩分が多くなりやすいと指摘されることもあり、「うちの実家の味」は自然としっかりした味になっていることも少なくありません。
1-3. 濃い味が「食欲の妨げ」になることも
「味が濃いほうがご飯が進む」と感じることもありますが、実は濃すぎる味付けが続くと、次のようなことが起こりやすくなります。
- 喉が渇きやすくなり、水分ばかり飲んでお腹がいっぱいになる
- 胃が重く感じられ、「もういいや」と途中で箸が止まる
- 味付けが強くて、素材そのものの味を楽しめなくなる
特に70代以降は、もともとの食事量が若い頃より少なくなりがちです。そこで一回の食事が「濃くて重たい」と感じられてしまうと、食事そのものから距離を置きたくなることもあります。「おいしいけれど、なんだか疲れる味」になってしまうわけですね。
2.「味覚リセット」が健康寿命を支える理由
2-1. 「薄味=味気ない」ではなく、「素材の味が分かる」に近づく
味覚リセットというと、「今よりずっと薄味にしなくては」と構えてしまうかもしれません。でも、ここで目指したいのは、味を無くすことではなく、「素材の味が分かるバランス」に戻していくことです。
だしのうま味や、野菜や魚の持つ甘み・苦味・酸味といった要素が感じられるようになると、「塩や砂糖でごまかさなくても、おいしい」と感じる場面が増えていきます。これは、食事の満足感を高めるだけでなく、「少ない量でも満足しやすくなる」というメリットにもつながっていきます。
2-2. 減塩は「体にいいから」だけでなく「食事をラクにする」
日本では、食塩のとりすぎが高血圧などの生活習慣との関わりがあるとして、厚生労働省の資料などで、1日の食塩摂取量の目安が示されています。成人の場合、1日あたりおよそ7g前後を目標にする流れがあるようです。ただし、これはあくまで目安であり、個々の体調や持病によっても適切な量は変わるので、詳しくは公的な情報や主治医の説明も参考にしていただければと思います。
ここでお伝えしたいのは、「減塩=がまん」ではなく、「食事をラクに、おいしく続けるための工夫」としてとらえたいということです。味つけが少しやさしくなると、あとから喉が渇きにくくなったり、食後の重だるさが軽くなったりして、「また次の食事も楽しもう」という気持ちを保ちやすくなります。
2-3. よく噛んで味わうことで、食事の満足感が変わる
味覚リセットとセットで意識したいのが、「よく噛む」ことです。噛む回数が増えると、食べ物の味が唾液に溶けて、舌の味蕾にしっかり届きます。その結果、少し薄味でも「ちゃんと味がする」「噛むほどにおいしい」と感じられ、満腹感も得られやすいとされています。
一口で30回噛む、という目安がよく紹介されますが、厳密に数える必要はありません。今より「あと5回多く噛んでみる」「飲み込む前に一度だけ箸を置いてみる」といった、ゆるやかな目標からで十分です。
3.今日からできる“味覚リセット”5ステップ
ここからは、70代の方でも無理なく続けやすい「味覚リセット」の具体的な方法を5つのステップで紹介します。すべてを一度にやる必要はなく、「できそうなところから1つだけ」でも十分です。
STEP1:塩分は「いきなり半分」ではなく「1割ずつ」
減塩というと、「今日から塩を半分にしよう」と頑張ってしまいがちですが、急な変化は舌がびっくりしてしまいます。おすすめは、今の味付けから1割だけ薄くするイメージです。
- 味噌汁の味噌を「いつもの大さじ1」から「大さじ9分目」にする
- しょうゆをかける量を、最初から減らすのではなく「一度小皿に出してから、つけて食べる」
- ラーメンやうどんの汁を、まずは「3分の2だけ飲む」ことから始める
こうした小さな変化でも、続けていくと舌が少しずつ慣れてきて、「前ほど濃くなくても十分おいしい」と感じられるようになりやすいです。
STEP2:だしと香りを「主役」にしてみる
日本の家庭料理の強みは、なんといってもだしと香りです。昆布、かつお節、煮干し、干し椎茸などのだしをしっかりとると、塩分を控えめにしても物足りなさを感じにくくなります。
また、次のような香りのアイテムも、味覚リセットの心強い味方です。
- ゆず、かぼす、すだち、レモンなどの柑橘
- しょうが、しそ、みょうが、ねぎ、ごま
- 七味とうがらし、山椒、わさび(辛味の強さには注意しつつ)
たとえば焼き魚の場合、塩をきつくふる代わりに、薄味の下味+柑橘でさっぱりいただくと、香りも一緒に楽しめます。だしや香味野菜は、塩分や砂糖に頼りすぎない「おいしさの土台」になってくれます。
STEP3:噛みごたえと歯ごたえを少しだけプラス
よく噛むためには、食材そのものにほどよい噛みごたえがあると続けやすくなります。
- 野菜はやわらかく煮るだけでなく、一部は歯ごたえを残す
- こんにゃく、根菜、きのこ、海藻など、噛む回数が増える食材をプラスする
- ご飯を白米だけでなく、雑穀米や麦ご飯にしてみる
ただし、歯やあごの状態によっては、硬すぎる食材が負担になることもあります。痛みがある場合や、噛みにくさが続く場合は、無理をせず、歯科医やかかりつけ医に相談するようにしてくださいね。
STEP4:彩りを増やし、「目」でおいしさを感じる
味覚リセットというと「味」の話に目が向きがちですが、実は視覚・嗅覚・触覚も食欲に大きく影響しています。同じメニューでも、彩りを意識するだけで、「おいしそう」という気持ちがぐっと高まります。
- 白・緑・赤・黄色・茶色など、3~4色以上を盛り合わせる
- 同じお皿に盛るのではなく、小鉢や小皿に少しずつ分ける
- テーブルクロスやランチョンマットで背景の色も楽しむ
「目で味わう」部分が増えると、塩分や糖分での刺激に頼りすぎなくても満足しやすくなります。お店の定食をイメージして、少しずつ、いろいろを意識してみてください。
STEP5:テレビを消して、「味に集中する時間」をつくる
食事中にテレビやスマホを見ながら食べていると、どうしても「なんとなく口に運んでいるうちに、気づいたら食べ終わっていた」という状態になりがちです。これは、味をしっかり感じるチャンスを逃してしまっているとも言えます。
1日3食のうち、1食だけでも構いません。テレビやスマホの電源を切り、「今日のご飯の味」をゆっくり確認しながら食べる時間をつくってみてください。「いつもより味や香りに気づきやすい」「この野菜、甘みがあるなあ」といった小さな発見が、味覚リセットの助けになります。
4.70代でも楽しめる「味覚リセット」メニューの例
4-1. 朝:だし香る味噌汁と、具だくさんの一汁一菜
朝食は、一日のスタートとして体を温め、胃腸をやさしく動かす役割があります。味覚リセットを意識した朝の一例を挙げてみます。
- 昆布とかつお節でとっただし+味噌を少なめにした味噌汁
- 具材は豆腐・わかめ・ねぎ・きのこなどをたっぷり
- ご飯は茶碗に軽く1杯、漬物はいつもの半分の量
- 柑橘や季節の果物を少し添える
だしの香りがしっかりしていれば、味噌を控えめにしても物足りなさを感じにくくなります。「具が多くて味噌汁というよりおかずみたいだね」というくらいがちょうどいいかもしれません。
4-2. 昼:麺類は「具」を増やして、汁は控えめに
ラーメンやうどん、そばなどの麺類は、どうしても汁の塩分が多くなりがちです。完全にやめてしまうのではなく、次のような工夫で味覚リセットを意識してみてはいかがでしょうか。
- スープを全部飲まず、「今日は半分まで」にしてみる
- 野菜やきのこ、鶏肉など具材を増やし、麺の量を少しだけ減らす
- 薬味(ねぎ、しょうが、ゆず皮など)をたっぷり使う
「汁を残すのはもったいない」と感じる方も多いと思いますが、健康寿命の視点で考えると、「おいしいところだけいただいて、あとは体を思って残す」という考え方もアリだと思っています。
4-3. 夜:焼き魚+柑橘、蒸し野菜+ポン酢少々
夕食は、1日のご褒美タイムでもあります。ここでも「味覚リセット」を意識しつつ、しっかり満足感を得たいところです。
- 塩を控えめにした焼き魚に、すだちやレモンを絞る
- 蒸し野菜に、少量のポン酢やごま油+塩少々を合わせる
- 煮物は、だしを効かせて砂糖やみりんを控えめにする
香りやうま味を活かしてあげることで、「濃い味で一気に満腹」ではなく、「じんわりおいしさが続く食事」に近づいていきます。
5.食欲が落ちてきたと感じたときに見直したいポイント
味覚リセットを意識しても、どうしても食欲がわかない日、続かない時期もあります。そんなときは、次のようなポイントも一緒にチェックしてみてください。
5-1. 口の中の状態を整える
歯や歯ぐきの痛み、入れ歯の不具合、口の乾きなどがあると、食事が億劫になり、味も感じにくくなります。口の中のトラブルは、「少し気になる」くらいの段階で歯科に相談しておくと、食欲の低下を防ぐことにつながる場合もあります。
5-2. 食べる「環境」を変えてみる
同じメニューでも、食べる環境によっておいしさはずいぶん変わります。
- テーブルの上を片づけて、食事に必要なものだけを置く
- 明るすぎない、やわらかな照明にしてみる
- 好きな音楽を小さめの音で流す
- できる範囲で、家族や友人と一緒に食卓を囲む
「誰かと一緒に食べると、自然と箸が進む」というのは、多くの方が経験していることだと思います。身体のためだけでなく、人とのつながりも食欲を支える大事な要素です。
5-3. 体重の急な減少や、だるさが続くときは早めに相談を
「なんとなく食が細くなってきたな」と感じる程度なら、味覚リセットや生活の工夫で様子を見るのも一つの考え方です。ただ、次のような状態が続く場合は、早めに医療機関に相談することも大切です。
- ここ1~2か月で、明らかに体重が減ってきた
- 何を食べてもおいしく感じられず、食事量が大きく減っている
- だるさや息切れなど、日常生活に支障が出てきている
この記事では医療的な判断は行いませんが、「いつもと違うな」と感じたら、無理をせず専門家のアドバイスも頼りながら、安心できる形で食事を続けていってほしいと思います。
6.僕自身が経験した「薄味に慣れていく」プロセス
ここで少し、僕自身の体験もお話しさせてください。僕はライザップに通ってボディメイクに取り組んだことで、食事の味付けと向き合う経験をしました。最初は「こんなに薄くして満足できるのかな?」と思ったのですが、数週間もすると、不思議なことに素材の味や、だしの香りを前よりも感じ取れるようになったんです。
そのときのことは、リバウンド経験者がライザップで変わった体験談【和久井編】でも詳しく書いていますが、「味覚は年齢に関係なく、少しずつ育て直せるんだ」と実感しました。
もちろん、ライザップのような本格的なプログラムに取り組むかどうかは、人それぞれだと思います。ただ、「味の好みは変えられないもの」ではなく、「ゆっくりなら変えていけるもの」と考えると、70代からの味覚リセットも少し気楽に感じられるのではないでしょうか。
7.「味覚リセット」は“頑張ること”ではなく“慣れていくこと”
7-1. 小さな変化を「よくやった」と認める
減塩や味覚リセットという言葉を聞くと、「ちゃんとやらなきゃ」「守れなかったらダメだ」と、自分を追い込みたくなることがあります。ですが、健康寿命を考えるうえで大切なのは、長く続けられるペースを見つけることです。
たとえば、
- 今日はラーメンのスープを、いつもより少し多めに残せた
- 味噌汁の味付けを、少しだけ薄くしてみた
- ゆっくり噛んで食べたら、いつもより満腹感を感じた
こうした一つ一つは、他人から見たら小さなことかもしれません。でも、自分の体と向き合って行動を変えた、立派な一歩です。ぜひ、「今日はここまでできた」と自分をほめてあげてください。
7-2. 家族と“味のゴール”を話し合う
同じ家庭でも、世代が違えば味の好みは変わります。70代の親世代はしっかりした味を好み、子世代や孫世代は薄味になれている、というケースも多いかもしれません。
そんなときこそ、家族で「どんな味付けを目指したいか」を話し合うチャンスです。
- みんなでだしから取ってみる日をつくる
- 塩やしょうゆを減らした分、香味野菜を増やしてみる
- 「今日はいつもより薄味だけど、どう感じる?」と感想を言い合う
家族と一緒に味覚リセットに取り組むと、「一人だけが我慢している」という孤独感も減り、「みんなでチャレンジしている」という前向きな空気が生まれます。
7-3. 「完璧」を目指さず、7割くらいを目安にする
味覚リセットや減塩は、「完璧にできる日」よりも、「そこそこできた日」を増やしていくほうが、健康寿命という長いスパンで見るとプラスになりやすいと感じています。
外食をする日や、どうしても濃い味が恋しくなる日もあると思います。そんなときは、「今日は楽しむ日。明日ちょっと調整しよう」くらいの気持ちで、心を軽くしてあげてください。心の余裕もまた、健康寿命には欠かせない要素です。
8.まとめ:70代の味覚は、まだまだ“育て直せる”
- 70代になると、味を感じるセンサーや長年の食習慣の影響で、味付けが濃くなりやすい
- 濃すぎる味は、喉の渇きや胃の重さにつながり、かえって食欲を落とすこともある
- だしや香り、噛む回数、彩り、食べる環境を整えることで、「薄味でも満足できる味覚」に近づいていく
- 味覚リセットは、「我慢」ではなく「少しずつ慣れていく」ことがポイント
- 小さな変化を重ねることが、70代以降の健康寿命と「食べる楽しみ」を守る土台になる
味覚は、年齢とともに変化していくものですが、「変わったら終わり」ではなく、「これからも育て直せる」部分もたくさん残されています。70代だからこそ、長年の経験と知恵を活かして、自分の体に合ったおいしさを見つけていく時間が始まるのかもしれません。
今日の食事から、できそうなことをひとつだけ。だしをしっかり取ってみる、柑橘を添えてみる、いつもより5回多く噛んでみる──そんな小さな一歩が、「これから先もおいしく食べ続けられる自分」をつくっていくと、僕は信じています。

